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川崎重工は10月19日、神奈川県川崎市の川崎LH2ターミナルで、日量50トンの水素を液化できるプラントの建設に着手したと発表しました。国内で公表されている最大級の日量15トンと比べ、3倍を超える規模です。完成は2028年末を予定し、試運転を経て2030年から液化水素サプライチェーンの商用化実証に使われます。NEDOのグリーンイノベーション基金事業「大規模水素サプライチェーンの構築」の一環で、日本水素エネルギーなども関わる計画です。実験室の延長だった水素の液化が、ようやく産業設備の規模に入ってきたことを示す発表といえます。

引用元: 川崎重工、国内最大の日量50トン水素液化プラント建設に着手(AFPBB News)

分析・見解

日量15トンから50トンへ、3倍超の跳躍が持つ意味

水素は気体のままだと体積がかさみます。そこでマイナス253度まで冷やして液体にすると、体積は約800分の1になります。船で運ぶには、この液化が欠かせません。

これまで国内で公表されていた最大規模は日量15トンでした。今回の50トンは、一気に3倍を超えます。装置は大きくなるほど、処理量あたりの建設費と電気代が下がる傾向があります。規模の拡大は、単なる見栄えの話ではありません。コスト競争力を作るための必須条件です。

液化は水素の運賃の中で最も重い工程

水素の輸送コストで大きな割合を占めるのが、液化にかかる電力です。現在の技術では、水素が持つエネルギーの2割前後を液化で使ってしまうとされます。つまり、冷やすだけで貴重な水素を目減りさせている形です。

だからこそ、日量50トン級で効率を高める意義は大きいのです。圧縮機や熱交換器を大型化し、無駄な熱の出入りを減らせれば、1キログラム当たりの液化コストは下がります。水素の価格目標である「1立方メートル当たり30円」に近づくには、製造だけでなく、この工程の改善が欠かせません。

実証の場所が川崎という点が重要

今回の舞台は、すでに液化水素の荷役基地がある川崎LH2ターミナルです。オーストラリアで作った水素を液化して船で運ぶ実証は、すでに進んでいました。そこに国内側の大型液化設備が加わることで、輸入、貯蔵、液化、出荷という流れを一か所で確かめられます。

電力や化学の大口需要家が集まる臨海部に置く点も、理にかなっています。つくった水素をすぐ近くで使えるからです。輸送距離が短ければ、トラック輸送の手間も減ります。

残る課題は需要の厚みと電力の調達

一方で、課題もはっきりしています。供給設備だけ先に大きくなっても、買い手が増えなければ稼働率は上がりません。工場のボイラー、発電所の混焼、燃料電池トラックなど、水素の使い道が具体的な契約に落ちるかが焦点です。

もう一つは電力です。液化に大量の電気を使う以上、再生可能エネルギー由来の電気を安く確保できなければ、環境価値が薄れます。2030年の実証は、設備の性能だけでなく、電力調達や需要づくりまで含めた総合テストになるでしょう。

ビジネスへの影響

設備投資の判断は2028年より前に始まる

プラントの完成は2028年末ですが、実際の取引条件は、その前から交渉が進むとみられます。水素を使う側の企業は、完成後に検討を始めたのでは遅れます。供給量の優先枠や価格の決め方は、早く手を挙げた企業が有利になりやすいからです。

自社の工程で、どこに水素を使えるかを棚卸ししておくことをお勧めします。高温の熱を使う工程や、天然ガスの代替が可能な設備から調べるのが現実的です。

設備メーカーや物流企業に開く新しい商機

液化水素は、専用のタンク、配管、バルブ、断熱材、ローリー車を必要とします。部品の数は多く、中小企業でも参入の余地があります。極低温に耐える材料や、漏れを検知するセンサーは特に需要が伸びるでしょう。

物流企業にとっても、危険物輸送の経験が強みになります。港湾、倉庫、保安の人材を早めに育てれば、2030年の実証開始と同時に実績づくりに入れます。

補助金頼みの計画は避けたい

この事業は国の基金を土台にしています。ただ、商用化の段階では、補助が薄くなる前提で採算を組む必要があります。価格が下がる時期を見誤ると、投資が重くなります。

導入を検討する企業は、複数の価格シナリオで試算し、段階的に切り替える計画を立てるとよいでしょう。小さく始めて、数字を見ながら広げる方針が安全です。

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