ニュースの概要

水素エネルギーの普及を目指し、東京都の小池百合子知事と山梨県の長崎幸太郎知事が対談しました。場は、初めて開かれた国際会議「富士ハイドロジェンサミット」です。山梨県は再生可能エネルギーで水素をつくる研究や実証に力を入れており、東京は水素を大量に使う巨大な消費地です。つくる側と使う側のトップが同じ場で語り合ったことに、今回の対談の意味があります。国際会議という形をとったことで、海外の自治体や企業との連携を呼び込む狙いも見えます。水素は技術の話に見られがちですが、実際には地域同士の役割分担と需要づくりが普及の鍵を握ります。本記事では、この対談を手がかりに、水素普及の現在地と企業への影響を考えます。

引用元: 水素エネルギー普及へ 小池都知事と山梨・長崎知事が対談 初開催の国際会議「富士ハイドロジェンサミット」(TBS NEWS DIG)

分析・見解

製造の山梨と消費の東京が組む意味

水素の普及で最初にぶつかる壁は、つくる場所と使う場所が離れていることです。山梨県は日照時間が長く、太陽光で電気をつくり、その電気で水を分解して水素を得る取り組みを進めています。燃やしても二酸化炭素を出さない水素を、地元の電気だけで生み出せるのが強みです。一方、東京は人口と産業が集中し、バスやトラック、業務用ビルなど、水素の使い道が多い都市です。

つくる側だけが頑張っても、買い手がいなければ事業は続きません。使う側だけが旗を振っても、安く安定した供給がなければ広がりません。両知事が同じ場に立ったのは、この両側を一本の線でつなぐ合図と読めます。

自治体が前に出ると需要が見えやすくなる

水素事業が難しいのは、最初の数年の需要が読みにくい点にあります。企業は需要が見えなければ設備投資に踏み切れません。そこで効くのが、自治体による大口の購入約束です。東京都は水素で走る燃料電池バスやタクシーの導入に補助を出してきました。公共の車両や施設が先に買う姿勢を見せれば、民間も計画を立てやすくなります。

似た例は海外にもあります。ドイツでは州政府が水素で走る鉄道を導入し、車両メーカーと燃料供給網を同時に育てました。日本でも自治体が最初の客になる形が、広がり始めたといえます。

国際会議という形に込められた狙い

今回の会議は国際的な場として開かれました。水素は一国だけで完結しにくい分野です。装置の規格、安全基準、輸送方法が国ごとに違えば、部品メーカーは市場を広げられません。国際会議は、こうした決まりごとをそろえる入り口になります。

また、富士山という世界的に知られた象徴を冠したことには、発信力を高める効果もあります。観光と環境を重ねて地域の価値を示せば、海外の投資家や研究者の関心を集めやすくなります。

残る課題はコストと運び方にある

ただし、熱気だけで普及は進みません。水素はいまも、同じ熱量を得るための費用が天然ガスより高くなりがちです。さらに、軽くて漏れやすい性質があり、運ぶには高圧のタンクや極低温の設備が要ります。山梨から東京への距離は近いとはいえ、トラック輸送のコストは無視できません。

そのため、短期では工場やバスの車庫のように、需要が一か所に集まる場所から始めるのが現実的です。そこで実績を積み、価格が下がった段階で住宅や小売に広げる順序が、最も無理の少ない道筋だと考えられます。

ビジネスへの影響

自社の水素との接点を三つの視点で洗い出す

今回の動きは、水素関連企業だけの話ではありません。まず、自社の車両や熱源が水素に置き換わる可能性があるかを確認してください。物流や製造業では、将来の燃料の選択肢として検討する価値があります。次に、取引先が水素関連の設備や部品を必要としていないかを調べます。装置の配管、センサー、安全管理の分野には、中小企業が参入しやすい余地があります。最後に、自治体の補助金や実証事業の公募情報を定期的に見ておくことです。公募は短い期間で締め切られることが多く、事前の準備が採択を左右します。

小さく試し、数字を持って判断する

水素への投資は金額が大きく、判断を誤ると負担が重くなります。そこで、いきなり設備を買うのではなく、まず自治体や大学との共同実証に加わる方法があります。費用を分け合いながら、自社の現場で使えるかを確かめられます。その際は、燃料費、設備の維持費、補助金を引いた実質負担を一枚の表にまとめ、天然ガスや電気との比較を残してください。数字がそろっていれば、経営会議でも説明がしやすくなります。

同時に、取引先や顧客からの環境対応の要請が強まる点にも注意が必要です。水素に取り組む姿勢そのものが、入札や採用での評価につながる場面が増えています。今回のような官民連携の動きを追い、早めに窓口をつくっておくことが、数年後の選択肢を広げます。

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